デイビッドロックの「最高の脳で働く方法」を読んで

本書では様々な働くシーンで、具体的にどのように脳を使うことがより効率的で且つよりよい結果を出せるかという点を、実際の事例のBefore & Afterで説明しておりとても分かりやすい。例えば、漠然と理解している「マルチタスクは効率が悪い」ということも、脳科学的に前頭前皮質の特性から説明しており理解が深まる。マルチタスクをすることでミスが増えるなどはなんとなくわかっていても、それは相関関係が分かっているだけで、因果関係が分かっていない。ただ、本書で前頭前皮質の構造が分かると、なぜマルチタスクが効率が悪いのか(できたとしても脳のエネルギーを多く消費するために効果的な脳の使い方ではない)を理解することができる。

 

1.前頭前皮質の能力には限界がある

本書全体を通して、前頭前皮質を小劇場の舞台に例えている。具体的にはとても窮屈な舞台であり、一度に考えられることには限界があり(4つ程度、マルチタスクをすると更に減る可能性が高い)、新しい情報はよく理解している情報よりも場所をとる。また、強い演出家(自制心により気が散らないようにコントロールする人)が働かなければ、関係のない役者が飛び込んでくるため舞台はめちゃくちゃになり、まとまったことが考えられない。

ー映像は情報効率が高い構成概念である

ー脳はいつでも一つの認識に落ち着く必要があり、だまし絵でも一度に両方をみることはできない

ー舞台に上げやすい役者ではなく、最も重要な役者をまず舞台に上げるようにこころがける必要がある

ー優先順位付けは高度な思考を必要とするため、より頭がスッキリした時に行うことが望ましい

 

2.腹外側前頭前皮質は摩耗する

あらゆる種類のブレーキに共通して使われるシステムが腹外側前頭前皮質だが、これは脳の中で最も脆弱で、きまぐれでエネルギーを消費する部位に位置している。大きな問題としては、ブレーキの使用間隔を十分に開けないとブレーキがかからなくなってしまうこと。ある実験ではチョコレートを我慢させられた人たちがいち早く難しい作業を投げ出してしまった。その理由の一つが、脳信号が欲求を形成してから、行動するまでの間には0.2秒ほどしかない点がある、その時間はとても短いために正常な状態でなければ抑制できない。

 

3.適切な覚醒度を保つ

脳はリラックスしすぎているとそれはそれで注意散漫になり、特定の部位が興奮しすぐていると他の脳からの信号に気付けない。そのため、適度な緊張状態を作るのが望ましい。緊張状態の作り方としては、①脅威を感じさせアドレナリンを出すこと、②興味を持たせポジティブな予想からドーパミンとアドレナリンを出すことだ。なお、ある脳部位が過剰に活性化した場合は、別の部位を活性化することで問題を解決できる場合がある。

ーマインドフルネスは難しくなく、マインドフルな状態でいるのを忘れないようにするのが難しい

ー感情による興奮を和らげるには、情動を少ない個渡場で言い表す必要がある。間接的な比喩や象徴的な表現の方が望ましい。とこ場で表すには前頭前皮質を活性化する必要があり、それによって大脳辺縁系の興奮が和らぐ。尚、情動を少ない言葉で表せば情動を押さえられるが、情動について会話を始めると逆に情動を強める傾向がある。

 

4.戦う相手を自分にする

脳はステータスの脅威を嫌い、向上を求める。その意味で好ましい比較対象者は「過去の自分」なのだ。また、自分の取り組みの進捗や課題を相手と共有すればつながりの感覚も増やすことができる。また、自分と競争するためには、自分を知らなければならない。これには強力な演出家が必要となるため強い演出家を育てることになる。

 

5.SCARFモデル

Status(ステータス)

Certainty(確実性)

Autonomy(自律性)

Relatedness(つながり)

Fairness(公平性)

生存に関わる問題と同等に扱う社会的な経験の領域が以上の5つであり、これらを意識したうえで、自分及び他人と接することが必要である。他人の「ステータス」を下げないことを約束し、議論のポイントを事前に開示することで「確実性」を高め、相手に選択させることで「自律性」を上げ、相手を人として扱い且つ公平に接することが大切なのだ。謙虚な人が偉くなるのもうなずける。謙虚であることは他人のステータスを保持し、確実性も高められるので周りをやる気にさせやすいということだ。

 

是非これらの学びを活用して仕事をしたいと思います!